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2014年2月22日土曜日

フルートソナタ全集 ヘンデル~ペーター・ルーカス・グラーフ



ゲオルク・フリードリッヒ・ヘンデル フルートソナタ全集 ペーター・ルーカス・グラーフ 
claves records Swizerland 1988 このアルバムです。

以前、NHKの日曜美術館で、このCDにあるソナタ ホ短調(ハレソナタ第2番) 最初のアダージョのフルートパートをバイオリンに編曲したものが絵画の紹介時に流れていてびっくりしたことを覚えています。誰の絵だったかもう全く印象も残っていないのですが、その時の楽曲だけ残っています。
この曲自体の素晴らしさなのでしょう。特にわたしの好きな楽曲で、ヘンデルの最も感動的なテーマの一つだと思います。
フルートでなくてもこれだけ聴かせるのか、と思いつつ浸りました。絵を見るためにその番組を見ていたのに、絵が飛んでしまって、流れた曲のことだけ覚えているのですから。
もともとわたしは、絵より音楽の方が好きなんでしょうね。どうだろう?
(とりあえず絵が専門なのですが(笑)

このソナタ全集は、わたしがフルートを習っていた遥か昔に、厳しいのですが必ず最後に褒めてくれる先生が練習曲ばかりではつまらないかも知れませんね、とこの全集の何故か8割くらいを網羅した楽譜をくれたのです。(と言っても購入したのですが。つまりご紹介頂いた訳です。)
練習曲ははっきり言って音楽として興味がどうにも湧かず、いつもほとんど見てこないので、先生も渋い顔をなさっていました。でもこの副楽譜は自分で吹いている下手くそな音でも聴きながら感動してしまい(笑
何度も吹いていったものです。
「よく練習してきましたね。自分なりの曲想を持ってよく吹けていましたよ。」などと言われ満更でもない気がしていました。
自分としては練習したつもりはなく、単に吹きたいから吹いていったのです。
勿論、次から小節ごとに赤を入れられ相当直されました。(言うまでもありませんが(笑)

わたしは基礎をやるのが好きではなく、最初の音出し訓練からへったっていた方ですので、吹き込んでゆくとボロが音に出てきていました。ブレス位置も含め、しっかりバレます。それだけで曲想が変わってしまいます。当たり前ですが。そこを先生がトレースすると、何と神々しい旋律か!?フルート自体が24Kで金のゴシック彫刻の眩い光を見ているようなのに(コンサート用の総プラチナも凄かったですが)、音がこれまた凄く心の強く靭やか、かつ煌びやかな響きなのでウットリしてしまうのです。(実はわたしはその時、技術だけでなくそのフルートにも嫉妬を覚えました。)

その音を、更に信じられない高みで鳴り響かせると、このグラーフ氏の音色となります!
良かった。そのときある程度のステレオコンポにしておいて。
まさに戦慄です!
それまで、ジャン・ピエール・ランパルをはじめ、かなりフルート奏者の演奏は聴いてきましたが、次元が異なっておりました。

わたしは、そこで自分の腕を上げなければならないとは感じず、フルートもそれなりのものにしなければ、と思い先生にも相談し「ムラマツ」の総銀ハンドメイドを購入しました。やっぱり楽器が良くないと良い音は出ないよ。ところが音出しからやってみると、そう簡単に音自体が出ないではないか?!焦りましたが、そのフルート結構肉厚で音がこれまでよりも出し難いことが分かり、少し真面目に取り組む必要性を自覚しました。(要するに少しは真面目にやれということです。)次第に出てくればこれまでとはかなり違う、重みのある美しさが、はっきり確認、出来ます。
やはり楽器自体が大事だな、と密かに思い次は「金」だと内心思いました。先生は悟っていないだろうなと顔を窺いながら。(誤魔化しなどすぐ見破ってしまう大変勘の良い先生なので、道具のせいにしているなと分かったところで宿題を二倍出されます。)
でも、この楽器に関しては(他はほとんど知りませんので)、物の良さが直接響きますね。やはり良い品質のものでないと良い曲は吹けません。フルートは何より、どれだけ美しい音を出すかがまず勝負ですから。勿論、運指の正確さは当然ですが。


今日は、まだ本題に入っていません(笑

アレグロは確かに運指の上でも難易度は高くなりますが、練習次第で吹けた気がしてきます。指が慣れてきますから。(勿論プロが聴いたら穴だらけです。)しかし、アダージョにおいては、相当な音出しをして、肺活量も十二分に持っていないと、とても小節を跨ぐこのテンポのスラーには耐えられません。ブレス位置は絶対です。それが曲を確定しますから。何を素人臭いことを言っているかといいますと、スローテンポの曲こそ偉大な演奏家の腕が素人耳にも克明に分かるのです。
グラーフ氏の領域に入るともう技術すら感じられません。
ランパル氏の場合ですと、上手い、よくこんなところに、こんなこじゃれた装飾を入れてきた。といちいち感心しながら聴いてしまうのですが。

この時期の楽譜は、バッハもそうですが、必要最低限のものしか作曲家は譜面に書き入れておらず、要所要所に装飾を誰もが入れて演奏しています。それが楽譜の解釈でもあります。わたしも随分解釈して装飾だらけにしてみました(爆
遊びですから気楽なもんです。

グラーフ氏の演奏はセンスが良いとかいうレベルではないです。明らかにランパル氏は極上のセンスの持ち主です。
上手いとかいうレベルをとっくに超越しているものです。
これは技術の積み重ねで到達するものなのか、それ以外の何かなのか?
彼の演奏がどれほどのものなのかは、プロの感想をご紹介して、それに代えさせて頂きます。
チェリスト奥田なな子氏の共演後のお話から引用します

終演後、グラーフさんと記念に。
華やかで綺麗ではあるのですが正直なところ、フルートという楽器にどうしても興味がわかず、
今回も、すごいお方がいらっしゃるとは聞いていたのですが、管楽器と弦の音色って全く別枠でどうしてもうまくまざらないような気がしていたので、今回のクァルテット、どうなんだろうと思っていたのですが、もうグラーフさんの言葉に表せない演奏、音色に鳥肌がたち、その音色に吸い寄せられるように自分のチェロの音までぐんぐん美しくなっていくような感じで、彼と演奏した時間は本当に感動的で幸せなひとときでした。こんな貴重な演奏の経験、この先あるのだろうかと疑問に思うくらい、素晴らしい経験でした。二日目の本番の時も演奏しながら、この幸せなひとときがもうすぐ終わってしまうという事が悲しく思えるほどでした。
彼の音をしっかり耳に焼き付けたので一生忘れないように自分の頭の中で鳴らしています。

グラーフさん、もうスイスに戻られたかな。。。

演奏もさることながら、83歳というご高齢でありながら、指揮も演奏も全く年を感じさせないその若々しさ、背中もまっすぐで颯爽と歩かれるそのお姿に皆が驚いていました。


しばらくグラーフさんのあの演奏の余韻に浸っていたいです。


チェリスト奥田なな子氏との共演後。管・弦の共演もまた素晴らしく良かったようです。
わたしの話は自分のことばかりでした。最後の引用だけでよかったかも知れません。
本当の音を間近で直接聴くことの重要さを感じました。
わたしもかつてお師匠のコンサートは聴きに行きましたが、フルートがこれほど「強い音」の出る楽器だとはそれまで知りませんでした。

それ以外は、ストラングラーズなどの爆音をよく間近に聴きに行って耳を痛めました(爆

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