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2013年7月29日月曜日

絵画における光の変遷 バロック(17C)~ロココ(18C)まとめ



フェルメール(バロック)オランダ1632~1675

自身天才と呼んではばからないダリが、自分以外の画家で絶賛しているのが、このフェルメールとベラスケス(スペイン)です。
宗教革命を経て、偶像崇拝ができなくなったこの時代、宗教画に代わって登場したのが一般市民の日常生活を描いた風俗画です。これらの絵は国際貿易によって裕福になった商人を中心にして市場に溢れていきました。
これまで神や王侯貴族が描かれていたのと同じ筆致で一般の人々が堂々と描かれるようになり、王侯貴族以外の市民が自分の部屋に絵を飾るようになることは大きな変革でした。フェルメールは彼らに絵を提供する画家の中で、最も描写力があり構成力の並外れた画家としてあげられます。絵のサイズはほとんどが小さいものなのですが、そこに描かれたモデルの量感と存在感は圧倒的です。また、彼の絵を細かく観察すると、微細な光の粒が描きこまれているのが分かります。その光のつくる精緻な明暗の差異で見事な質感がうまれているのです。この質感へのこだわりはバロック期の静物画家には特に際立っているものですが、この時代が物の交易により成り立ち、物の質感(本物か偽者か)に何より重大な関心が払われた時期であることも見逃せません。レンズの発明もこの時期のオランダです。彼は初めてカメラオブスキュラ(カメラの原型)を使って遠近法的構成を厳密におこなった画家でもあります。光の粒子もピントの少しずれたカメラに生じる特有のもので、それを彼は陽光のきらめきを画面に閉じ込めることに積極的に利用したのです。
また、フェルメール特有の瑠璃色は彼の絵をさらに静謐で永遠の空間に結晶させています。
この時代の絵は彼の絵をはじめ、様々な象徴的な意味に満ちており、絵を購入してから部屋に飾ってゆっくり解読を楽しむものでもありました。


* 牛乳を注ぐ女 恋文 真珠の首飾りの少女


  これは、一体?(おまけ)ちょっと面白いとは思いますが、、、コメントは控えます。





レンブラント (バロック)オランダ1606~1669

 人物画の至高の成果として「モナリザ」が挙げられます。異論はありませんが、それに近づき得た作品として、ラファエロの「バルタザール・カスティリオーネの肖像」を押す人がいます。もっともだと思います。が、忘れてならないのは、レンブラントの後期から晩期に多数制作された「自画像」群でしょう。それらはもはや、一人の画家の自画像である事を超え、崇高で普遍的な人間像にまで昇華しており、大変偉大な芸術と評されています。
 このレンブラントの絵の特徴とされるものは、「レンブラント光線」と呼ばれる、劇的な光の演出です。スポットライトで照らし出されたように見えるモチーフと暗い奥行きのある背景は、光と闇の強烈なコントラストによる世界をつくりだしています。しかし注目すべきは、光を表現するための闇の効果です。実は16世紀、ルネサンス後期、レオナルドやミケランジェロの画面にも深い闇が覆いはじめているのです。先にあげたモナリザもかなり暗い背景の中に描かれています。それからというもの、光や色彩を際立たせるために闇は深みをいや増しに増していくのです。
 バロックの後期は他に、カラバッジオ、ラ・トゥール等の優れた画家の作品も一様に一点の光に浮かび上がる暗黒の世界に閉じ込められていきます。描写力や構成力の極まった果てに、光と色彩の表現が袋小路に入ってしまいました。レンブラントの絵はある意味でその典型でもあります。どの絵も格調高く、劇的で威厳に満ちているのですが、暗いのです。ひたすら重く暗いのです。この時代の画家のものには、場合によっては、意味の上では必然性もなく過剰に暗い絵もかなり見られます。

* テュルプ博士の解剖学講義 フランス・バニング・コック隊長の市警団 水浴する女



シャルダン (ロココ)フランス1699~1779

 フェルメールに比べると、この時代の画家の特徴は、形態の幾何学的な分析を通し、面の単純化をはかり、明暗を大づかみな段階として対象に与えた絵を描くようになります。と言ってもごつごつしたモチーフではなく、丸みを帯びた穏やかな形態で画面が形作られています。簡単にいえば、形を立体として手堅く効果的に描く技法を見出したと言えるでしょう。モチーフはより日常的で私的な世界となり、今日の画家が描くものとほとんど変わりません。その最初の画家と見てもよいのが、シャルダンかもしれません。子供(天使ではなく)を題材にしたのも彼が最初と言われています。
 シャルダンの絵はかのフェルメールほどの煌き(こまやかな陰影)による荘重さはありませんが、確かなモデリング、つまり立体感と量感をもったものであり、日常をありのままに描く上で、とてもふさわしい作風の創出と言ってよいでしょう。これはミレー(近代の画家まとめ参照)に引き継がれ、ドーミエ(近代の画家まとめ参照)などによりさらに単純化が図られ、展開していくものです。所謂現代の劇画、アニメーションにまでいきつきます。

* 食前の祈り 洗濯女 家庭教師




フラゴナール (ロココ)フランス1732~1806

「読書する女」というフラゴナールの絵は大変有名なので、見たことのあるひとも多いと思います。何より目立つのが、筆致で、それまでなるべく目立たせないことが主流であったものを、造型上なくてはならない要素として生かしているのが一目で分かります。その筆致は大変流暢で軽妙なものであり、画家の技量をよく示しているところです。さらに色彩が爆発するあの印象派(19C)直前の所まで来ていると言ってもよい、この明るく暖かく生を謳歌するような軽やかで生き生きした色使いが彼の持ち前です。この女性の衣服の色彩と筆致がさらに自在になり、画面全体に応用されれば、もうルノアールの世界です。

 ロココから印象派というと、距離を覚えることがありますが、このロココ後期の彼の絵が次の世界への接点になっているのが分かります。実際にルノアールはフラゴナールの絵に触発されており、彼の初期の限りなく美しい傑作「イレーヌ・カーン・ダンベール」も「読書する女」なしに生まれたかどうか分かりません。他に、この時代、ヴァトー、ブーシュなどの貴族趣味的で私的生活を描いた画家も見逃せません。

* ぶらんこ 読書する娘 ヴィーナスの目覚め


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