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2013年12月2日月曜日

ルノアールをカフェ・ルノアールで



ルノアールで一番好きな絵は、「イレーヌ・カーン・ダンベール」です。
ただ、ひたすら美しい少女像です。同様に美しいものに、ロココ期の画家フラゴナールの「読者する女」があります。
比べてみるとどちらも良いのですが、一歩さらに絵として進化した姿というと、ルノアールのものです。。なんというか一つ更に絵が自由になっている。
どこがというと、端的に示せるところは、背景です。
フラゴナールは、対象と背景を完全に違うものとして描き分けています。
しかし、ルノアールは、キャンパスの中はすべて「絵」になっています。
描き方は変わらない。画布の中味はすべて絵の対象。
フラゴナールにとっては、「読書する女」だけが対象。
背景は背後に退いていればよい。主題とは異質で等質に広がる空間が開けていれば、よい。
そこに、ルノアールと比べると絵として硬いというか、生命感、体温に少し乏しさが感じられます。
しかし、レンブラントのような暗闇にはなっていない。色彩の充分感じられる暗がりであることにホッとします。
ルノアールの作品は絵画全体が生命の喜びの脈打つ清々しい輝きがあります。

しかし、どちらの絵も、筆跡はとても素晴らしい。自由闊達な名人芸といっても良いものでしょう。
色彩もフラゴナールは印象派にあと半歩まで独自に迫っています。
もし、ルノアールと同時期に彼が絵を描くライバルの画家でしたら、大変優れた印象派の画家になっていることは容易に想像できます。
ともかく、どちらの絵を見ても、仏頂面になるような人はさすがにいないでしょう。
この心地よさは、単に見るというより、恐らくわれわれに触れるような姿勢を促してくる絵であるとこに窺えます。それは全てタッチの妙です。見た印象ではなく、触れる印象です。この意味ではフラゴナールはロココを超越しています。色彩の面でも明暗からはもうほとんど脱していますし。

衣服、素肌の触感の豪胆でありながら繊細な捉え方。何という触り心地の良い絵だろう。兎角印象派は光が取り沙汰されて、外光の元での表層の印象の移り変わりにばかり囚われていきます。後期になると光点を用い、厳密な理論化を図り対象に依拠しながら、対象を見失い、抽象としての独自性もない絵に先細りしていきます。
ルノアールは他の印象派の画家ほど外では描いていません。そのことは、絶え間ない光の移り変わりに神経質にこだわり続けるのではなく、質の印象を筆跡の精妙な技術によって、活き活きと捉えるもうひとつの印象派を作り出していたと言えましょう。
室内で描くことも大切です。

ルノアールについてはまだまだ他に言いたいことがありますが、今回はフラゴナールという優れた画家を引き合いに出して、魅力を少しだけ述べてみました。


美味しいスイーツとコーヒーでした。ちょうど良い時間です。では。




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