相模原市民ギャラリーにて、12/13~12/15まで開催。なお、最終日は14:30終了。
弥栄高校の美術専攻科の女子高生たちの制作した様々な作品の総合造形展です。
・油絵 ・日本画 ・彫刻 ・版画 ・クラフトデザイン ・マルチメディア
・ビジュアルデザイン ・総合造形
以上、8つの専攻に分かれています。造形関係をすべて網羅してますね。
遠藤彰子氏からも指導を受けたり、イタリア姉妹校交流を通し審美眼を養っているそうです。羨ましい限りです。恵まれた教育環境です。
○1年生作品。
西湖での合宿で描いた「風景画」です。
まだカンバスは使っていませんが、デッサンの勉強を主体にしている様子でした。
基本的に線描をしっかりやって塗り絵的に色を上から塗りこむかたちです。
まずは「線」からということで、この次の専攻課程からそれぞれなのでしょう。
形を構造的に捉えることは大切です。
○2年生作品。
イタリア旅行で吸収したものを成果として発揮しています。(イタリア留学っていいんですねえ)
のびのびと自分のテーマを表現しています。
意欲的な作品ばかりでこちらが嬉しくなります。
絵もカンバスで60号以上のものが並んでいて堂々としてます。
なかでも、日本画にはワクワクさせるものがありました。
日本画の伝統技法にのっとって、ゴッシク調でオカルティックなテーマを耽美的・退廃的に描いたものなどよいですね。これからの日本画の可能性を感じます。特に「寄生」には日本画の形式も逸脱しようとする筆の動きがありスリリングです。
また情念的なことではなく「昇華」などの物理現象に着眼する点も興味をひかれます。イメージが溢れ出てますね。
「星空」はまた秀逸です。アトリエの構成要素を星―星座にダブルイメージさせるなど素敵なアイデアです。
背景に伝統文化に加えアニメ文化の要素が絡み合っていることが分かります。
日本画以外の作品もテーマの追求がよくなされたものが目に付きました。
○3年生作品。
卒業制作ですから、よく練られています。
ここでは、油絵にまず目を惹かれました。
「卒業」コラージュで同一画面に立体的に異なる時間を共存させるなど、勉強してるなと思わず感心しました。夕日の逆光に包まれた不敵な笑みを浮かべる横顔の自画像などなかなかなものです。
抑えたトーンで統一した色調で描かれた肖像画「いとまごい」も方向性は決めていますね。これをしっかり純化していくとひとつの作風ですね。勿論、この方向性の先輩画家は結構いますので、打ち出していくものを鮮明にしていくとよいと思われます。好感のもてる絵です。
「海坊主の夜」というのも面白いです。普通、一つの絵に複数の手法は導入しませんが、ここでは、面も点も線もすべて同質の面積の異なる面と見るべきのようです。それらの要素がグラフィカルに絡んで全体をまとめ上げています。遠近法の強調も効いています。
実験的で挑発的な作品が目に付きました。
日本画も勿論よかったです。この高校は日本画に力をかなり入れている印象をもちます。
他に版画もそれぞれ手法が生かされていました。
平面以外にも彫塑も動勢・量感ともにしっかりあり、、「クロサイ」「家族鍋」「みにつケーキ」等々よくできた楽しい作品がありました。
文庫本の装丁もよかったです。いわゆるエディトリアルデザインですね。
マルチメディアでは、映像作品への取り組みが見られました。
これから、どんどん進めてもらえればよいと思います。
photoshop,aftereffect,premiereなどが使われていましたが、まだ活用余地はいっぱいあると感じられます。MAYAを使って3Dとかにも発展していくのもよいかも知れません。勿論、ワークステーションが前提として必要ですが、学校なら十分大丈夫です。最低3台もあれば出来るでしょうし。
またメディア課と他の専攻との合同でインスタレーション作品を作るのも楽しいでしょうね。その際は、合同でのプログラミング学習も組むとよいと思います。自宅課題だとちょっとキツイかも知れませんので。
ザクッとした見た感想ですが、最後に1年生の作品でしょうか?
「なりきり絵画」!これはヘタすると一番面白いコーナーです。
観賞学習としての効果は十分あると思われますが、もうその「絵」になることで無我夢中という感じですね。とっても楽しかったでしょう。これをやって癖になる人も出てくるのでは。実際こればっかやってる画家がいますね。
でもここの一年生は、遥か上を行っています。なんせ人でないものになったり、群像をやったり、つぼの模様や抽象画にもなってしまっています。抱腹絶倒!ちょっと真似できません。
まさに、ここまでやるか、というノリです。びっくりしました。
また、一般にあまり知られていない画家の作品を取り上げているのもよいですね。確実に観賞学習となっています。
とても贅沢な勉強をしているな、という印象を持ちましたが、マルチメディアなどもっとお金をかけてもらい、もっと面白いものを作ってもらえると、来年の展覧会がさらに楽しみになります。
作品の照明には十二分に気を使ってください。
せっかくの生徒作品です。
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