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2013年8月24日土曜日

世紀末の画家 (象徴派・野獣派)

印象派の画家たちと同年代であるが印象派には属さず、独自の芸術を追求した画家たちがいた。
後に象徴派、野獣派などと呼ばれるが、彼ら自らは全くそのような会派を作って制作していたわけではない。(マチスとクリムトは実際に一時的な会派を作っている)しかしこの当時、終末思想が横行し、人々は世界が終わりに向かう漠然とした恐怖を胸に抱いて生活を送っていた面は無視できず、文化全般にその影響がみられる。



モロー
1826~1898

終末思想の蔓延するフランスで愚昧な大衆社会を嫌悪し、ほとんど自宅に閉じこもって、ひたすら自分の(象徴的)芸術世界の高みを極め続けた。ボードレールと同時代を(批判的に)生きる。

モロー独特の様式美は他に類を見ない抽象芸術のような色の乗せ方、タッチとさらに異常なディテールの描き込みが欠かせぬ要素で、テーマ(神話や伝説)を神秘的で幽玄な世界にしている。ビアズレーよりも早く、「サロメ」を題材にした豪奢で流麗かつ恐怖に痙攣する作品を描き、センセーショナルな話題を攫った(特にデカタンな詩人たちからは熱狂的支持を得た)。
また水彩画は小品ながら恐るべき完成度を誇るが、大作には未完成作品が多い。

初期においてはサロンにも出展し、メダルも3回も獲得しているが、元来の社交嫌い・秘密主義から(またサロン自体の権威の低下から)全く対外的な展覧会には参加しなくなる。1回のみのモロー展を除いて。しかし同時代の大画家たちからは非常に高い評価を常に受け続けた。後のダリも賛辞を寄せている。

教育者としても、才能を見抜きそれを引き出す指導に大変優れ、彼の教室からはマチス、ルオー、マルケらの巨匠を輩出した。音楽においてもモローは並々ならぬ素養を見せていた。
自宅と所蔵作品をすべて国に寄贈し、ギュスターブ・モロー美術館とした。

オイディプスとスフィンクス レダと白鳥 オルフェウス プロメテウス ジュピターとエウロパ オルフェウスの首を抱くトラキアの娘





ルオー
1871~1958

画家を目指す前は、ステンドグラス職人であった。

モローの教え子。何度も塗っては乾かし削り取って出来る分厚い七宝焼を想わせるマチュエールと大胆に単純化された形体が最大の特徴。深い宗教性を放つ絵は教会のステンドグラスのように輝く。初期の作品は激情をもって醜いものを告発するような表現が目立つが、次第に画面に静けさが表れるようになり、作品のテーマにはキリストが多く取り上げられるようになる。後期の絵は、キリストが題材でなくとも、言葉の真の意味で宗教画と呼べるような敬虔な絵が続く。師のモローを生涯敬愛し、ギュスターブ・モロー美術館初代館長を務める。

一度、仕上げた作品を何年もかけて手を加えることが多く、ついに300点にのぼる未完成作を自らの手で焼き捨てている。
版画も多く手がけ、「ミゼレーレ」版画集がある。

見習い職人 老いたる道化師 キリスト教的夜想曲  キリストの顔 ミゼレーレ 郊外のキリスト





マチス
1869~1954

法律家を目指すが、入院中に画家を志す。
モローの教え子。ルオーと生涯の友となる。

構図は垂直と対角線による複雑なものの形体は純粋に単純化され、何よりも「色」の相互作用がマチスをマチスたらしめる。スタイルを変えつつフォルムと色の実験を続けた成果は、20世紀最大の画家ピカソと並び称されるものである。
彼は制作に詰まったとき、常にセザンヌの絵に戻り、全体性の調和をみていたと言う。
彼のアトリエはいつも、緑の観葉植物、や鳥でいっぱいであった。また彼の絵には「窓」がよく描かれる。象徴的な意味でも重要な構成要素となっていたようである。
体力が衰えてからは、切り絵で単純化されたフォルムの構成はさらにマチスの世界を純化させる。

ピアノのレッスン ダンス 開いた窓、コリウール マチス婦人 王の悲しみ 青い窓 エジプト模様のカーテン 青い胴衣の女



  


ルドン
1840~1916

静物画や人物画が多いが、特異な幻想の世界も描き続ける。
無意識の世界や若い頃経験した顕微鏡下の世界や文学(ボードレール、フロベール)が作品に様々な形で表れていると言える。
モノトーンの版画作品や後の色彩が華やかに炸裂したかのようなパステル画を生む。

マラルメとの交友は有名であり、彼もまた孤独を愛し、夢想する思索者であった。初期の石版画には少なからずモローの影響が見られ、首や目玉が特異なテーマとなっている。他にも宙に浮く植物と人の顔の融合したような名状し難い不思議なモノたちが見られるが、恐ろしいというよりどれをとっても優しさ人懐っこさが感じられる点がモローと異なるルドンの資質か。ルドンはモローが内にのみ向けていた目を外界(自然)にも向けていたと言えよう。「超自然はわたしに霊感を与えない。わたしはただ外界を凝視するだけだ。それから人生を。」

ルドンは円熟期に版画の黒の中に永く宿っていた色彩を解放する。と同時に異形のモノたちは、すべからく天上のものに変貌した。
色彩、特にパステル画におけるブルーの使い方がモローにとても近いものを感じる。


キクロプス オルフェウス パンドラ 聖ゲオルキウスと竜 アポロンの馬車と竜 白い花瓶の花 後光を帯びた聖母マリア





クリムト
1862~1918

テーマはエロスとタナトスの表現を一貫して追求しており、琳派の影響か金箔も使用も目立つ、圧倒的に絢爛な作風である。退廃的な香りも怪しげに纏っている。多く描かれる女性は、聖母と妖婦の両義性をもっている。また特徴として、顔は非常に細密でリアリスティックな描写がなされているが、体―衣服や他の部分は装飾柄で構成されたパタンが目立つ。基本的に閉じた宇宙である。
風景画も装飾性においては人物画と変わらない。

この時期の芸術家はみな、同時代のウイーンの心理学者ジークムント・フロイトの影響は少なからず受けているが、クリムトもその例外ではない。

クリムトはベルギーのストックレ邸宅を部屋、家具、調度品、テーブルウェアに至るまでひとつの調和のとれた芸術作品として完成するなど、彼の装飾芸術(模様)は工芸・建築にも広がりを持つものであった。通常の絵画についても額縁を単なる縁ではなく絵画の延長として制作している物が多い。

また彼はエゴン・シーレやオスカー・ココシュカの若い才能をいち早く認め、強力にバックアップした。

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