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2014年3月15日土曜日

ゾンネンシュターン ~ 芸術の起源=魔術?


女からの逃走

ゾンネンシュターンは、狂気の妄想とエロティシズムを色鉛筆で紙に描きつけている。
大胆にしかも細心の注意を払って、魔術を執り行うような手順に従い。
彼の目には火のような確信に満ちた狂信の光が凍てついて点り、紙面を照らしている。

わたしはたしか、その絵を銀座の画廊で見たことがある。かなり昔のことだ。
満月が二つ合体したような巨大な御尻と獰猛な光る歯が印象に残っている。

ゾンネンシュターンとはなにか?
「太陽と星」
名前からしてダリよりも激しく直裁な自己顕示欲を感じさせる。

現代美術史のコンテクストにまったく属さない徒花?とは言え、根源的な何かに根を持つ妖しい花であることは直感できる。
一度見ると目を離せなくなり、幾度も日常の脳裏に白昼夢のように浮かび上がってくる画像。
太陽の明るい世界にも薄暗い星の元にも。
光にも負けることのない強度を持った悪魔のよう。

単純化された円やハート形の尻に乳房、細長く先のとんがった鞭状の舌・尻尾・性器、大きな羽に裂けた口にはぎざぎざな鰐を思わせる歯。
これらすべてはゾンネンシュターンの呪術にはなくてはならないもの。
太古、呪術と芸術の分かれていない暗黒の土地の儀式が忽然とひとりの画家によって行われた。
いかなる流れからも超然とし。
恐らく本人にも自覚なく。

ゾンネンシュターンとは、何ものか?
などいまさら問うても意味はない。
これらの画像群はどこから生じてきたものか。
画集で見ると何やら曼荼羅を思わせる確かな形態の志向性が窺える。
無意識的で意図的な働きを想わせる。
渦や円環が構造的にダイナミズムをもって運動している。

われわれの文化圏ではない何処かの土地の「天地創造」を示す物語の断片にも見えてくる。
しかしそこに描かれる動物、男、女はひどく凶暴で禍々しく破壊と敵意と嫌悪の情をあからさまにその表情に示している。が、ただそれだけではない。
その饒舌さと装飾性、ユーモアを漂わせたそれは何か暗示的でもあり象徴的でもある。下手をすると精神分析家にはもってこいの素材かもしれない。
しかし警告すら感じさせる余裕に満ちてもいる。


新たな破壊と生成の神話。

彼の絵は
何故か以前ぼやっと見たときより、身近にそして現代に差し迫って来ている。

Moon Prisoners

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