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2013年8月16日金曜日

相模原の女性画家展から7人ほどまとめ

ローカルな美術展ですが内容はなかなかのものでした。そのお勧めレポートです。8/25まで相模原市民ギャラリー(駅ビルの4F)で行われております。会場が混むことだけは絶対にありませんので、静かに誰もいないフロアで絵を鑑賞したい方は是非どうぞ。


1.遠藤彰子
武蔵美卒、武蔵美教授

「街」シリーズから2点展示。


一点は上から眺めたスタティックな建造物(街)の絵です。人も街中を歩いています。

もう一点は、かなりの大画面で上空に向かう絵でキャンバスを二枚繋げています。基本同様の街を下から見上げる構図ではありますが、その街がある部分では真横から、ある場所では真下から、またある所は上方からの視点で見ることを求められる構造体となっています。360度の視点を要求されます。ですから足場が悪い。首を右へ左へ傾け傾け見ることになります。
異なる空間・時間を動的に繋ぎ合わせ人々と建造物が上空を目指すことを予感させる力技です。画布の外にはみ出て行きそうな絵です。
エッシャーの絵のような厳密でスタティックな構造体ではありません。ダイナミックで「眩暈」を感じる運動体です。人物の動きや影にはキリコの郷愁が漂い、マチュエールを確認するとそこにはバルチュスが感じられます。
昔から教科書にも取り上げられていた馴染みの深い作家です。


2.大谷有花
多摩美卒、秋田公立美術大准教授

「ウサギねずみ」シリーズ?2点

ウサギねずみが黄緑色のバックで二匹対峙(1対向き合い)している絵です。絵によっては何も持っていないもの、片方が本を積み重ねて持ち、もう一方がキャンディーの入ったガラスの瓶を持っていたりで、何らかのコミュニケートが執り行われているかのように見受けられます。
作者によれば、ウサギねずみは、相反する性質を持つ二面性のある存在を意味し、黄緑色は作者の幼少期の部屋に敷かれた絨毯の色だそうです。
ファンタジーのように見えて、自分を客観視したうえでのメッセージだそうです。
構図がとてもスタティックで左右対称を基本としています。イメージをはめ込むタイプの構成です。


3.小野さおり
女子美卒、同大学院修了

「セカイノセカイ」他計2点

ツルツルの画面です。ブルーが基調になっています。コップの中に水晶や珊瑚、イソギンチャク、貝、半透明な球体、子供の人形の頭部などが入っている絵です。一つ一つが大変細密に描かれていますが、輪郭線も意図的にはっきり入れられており、そこが具象的な題材の絵を神秘的に抽象的にしています。
とは言えそれらの要素は、あくまでも静謐な空間に物音ひとつ立てず、永遠にコップの中に漂っているかに見えます。そのコップに指を入れると、温度を感じない、そんな世界です。
結構、見入ってしまうクセになるタイプの絵です。一人になったとき自分の好きなものを透明容器に静かに忍ばせていく感覚、、、。損保ジャパン美術賞を受けているようです。
ある意味、この絵はもう完成されているように思われます。次となるともう違う絵を描いていくしかないのでは、と思えるのですが。はっきり言って好きな絵ではあります。


4.菅野静香
女子美卒、同大学院修了

「うしろのしょうめん」1点

びっくりしました。パッと見たとき、ああ日本画かあ、と自動的に思ったのですが、よくよく見ると何と油絵だったのです!こんな描き方があったのか、またなんでと思いました。
絵そのものは日本画の様式美の範疇にありますね。平面的で装飾的そして細密。確か少女が9人いて、それぞれが顔も表情も皆異なり、動きも見られます。しかし画面全体に儚さが漂っており、作者の思い描く世界がはっきり具現されているように思われました。
しかしどうやって描いているのでしょう?何故、日本画ではなく油絵の具を使う必然性があったのか、聞いてみたいものです。


5.幡谷純
武蔵美卒、国画会会員

「来生」他沢山6点くらい?

中東地域の影響を受けて制作しているそうです。油絵です。
イスラム世界の太陽、砂漠、世界観などをもとに独特な立体模型を描きあげています。
複雑に交錯しながら延びる石版が作るまさに変幻自在な3D曼荼羅模様に展開していきそうな雰囲気も感じさせます。
しかし同様のコンセプトを持つコンピュータグラフィクスアーティストからのアプローチと多分に重なる領域での作業でしょうね。その点での一種危うい感じがする作品ではあります。


6.真島明子
武蔵美卒、九州産業大学非常勤講師

壁面オブジェ沢山

全て木のオブジェです。
なんというか、立体で壁面への接着面を除くと、上部と左右の面の他は面(囲い)が無く、中の構造が晒されています。そこには丁度接着面の裏側に貼り合わせる形で、黒く色を塗った小さな正方形の板が平に埋め込むように貼り合わされています。他の部分(面)は板の生の色です。
作者は、作品と作品を取り巻く空間との「関係」をテーマとしているようです。そんな開かれたオブジェをこの木片に確かに感じます。
「木を素材とした立体とその配置が生み出す関係性」
木ではないですけど、こうしたテーマはわりとよく見ますね。というか日本古来の伝統的な芸術はみなそうです。庭園の砂の上に置いた石など。基本といえば基本中の基本です。


7.山田美佳
女子美卒、刺繍の注文製作(銀座)

「潮流に乗る海亀」他2点

物凄いビビットな絵だと思い、アクリルかと想像しながら近づくと、またもやびっくり仰天!刺繍でした!何という細かな作業。気の遠くなる手のこみ方。これはもう伝統工芸の分野です。すぐに人間国宝か?
「刺繍の新たな可能性」、と書かれてありましたが、そのような着眼があったとしてもこの技術がなければ水の泡です。海亀が泳ぐ大海に巻き起こるひとつひとつの細かい泡の見事なこと。今のうちに後進(弟子)の指導も始めておくことをお勧めします。亀の顔の表情?も本当にリアルでした。



他にまだ5人ほどの方の力作がありました。会期中もう一回見に行きたい気もします。遠藤さんと小野さんの作品を特にまた見たいです。
それでは。どうも。












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