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2014年1月28日火曜日

ヴィジェ・ルブラン ロココ風新古典主義というか

ヴィジェ・ルブラン(1755~1842)フランス

女流画家・彫刻家には容貌の美しい人が少なくないです。
ここで一々名前を挙げる気はないですが。

ヴィジェ・ルブランはその幾つもの自画像からその美しさはよく知られていますね。
名前は知らなくても、美術館の絵葉書などで見たとか言う人は多いはずです。
とりあえず、同時代のマリー=ガブリエル・カペも挙げておきます。このヒトも自画像を見る限り大変美しい女流画家です。

この時代、つまりマリーアントワネット、ルイ16世、ロベスピエール、ナポレオンという人々が短いスパンで栄枯盛衰を時代をもみくちゃにしながら激しくやってのけ、その中で、画家も自分の地位を築いていく必要がありました。
肖像画(貴族や英雄のもの)やそれと絡めた歴史画を描いていたロココから新古典主義の時代です。

私はこんなに上手に描けるという貴族へのアピールのために画家はサンプルとして自画像を描く事が多かったのです。
最も有名で成功した画家といえばダヴィットと言えるでしょうか。地位は上り詰めたと言えますが、そこは今ひとつ見方にもよるので、何とも言えないところです(ナポレオン没落とともに地位も制作意欲も萎えてしまい晩年はとてもキツイので)。

その才能においてはダヴィットに勝るとも劣らない画家として、マリーアントワネットの肖像お抱え画家としてヴィジェ・ルブランがいます。マリーとは同い年で、マリーはヴィジェの前では全てを曝け出し、素顔の自分を描かせていたと言います。質素な装いの肖像画も有りその親密さが分かります。そう言えばこの二人を中心に描いた映画がありましたよね。見ていないのですが、ぜひ見たいです。どんなふうに描かれているのか。(よかったら教えてください。ブルーレイ買います。)

ヴィジェ・ルブランの十代半ばの自画像など見ると、比較できるのはピカソかダリくらいと言えるほどの早熟の天才でした。これほど描けるのでは、当時女流画家の身分が今ひとつであっても両親も画家にせざるを得なかったと言えましょう(とは言え母親も画家だったと思います)。幸いマリーアントワネットの庇護の下、一番のお気に入り画家として制作できたのは良いのですが、いざ革命となったときは亡命するしかなくなります。勿論後にフランスに是非戻ってと呼び戻されますが、そのままいたらギロチンは免れなかったことでしょう。

彼女はまた、何と可愛らしく自らを描くのか!ドヤ顔でもおすまししているのではもなく、口をわずかに開けて見る者へ何かをそっと囁きかけてくるような愛らしく爽やかで知的な、それでいて凛としていて親しみのある何とも言えない焦慮の念を抱かせる表情の自画像なのです。

この少し口を開けているところがポイントなのです。あなたとコミュニケートしたいのです的な表情。こりゃ、ひとつ私を描いてくださいという流れにみんな行ってしまいそうですわ。頭の良い人と言われていますが、マーケティングスキルも並ではないですね。もし意図せず無意識に描いているのなら、こりゃ手に負えないと言うか天才という以外になんと言えばよいのですか?

ちなみにマリー=ガブリエル・カペは自らの美貌を思いっきり誇るようなドヤ顔です。これはこれで良いと思います。スカッとしていて。技量も大したものです。

この時期の絵画のパラダイムを決定したのは他ならぬダヴィットだと思います。
他の同時代のぼんやりロココ調でのどかに描いていた画家たちもみな新古典主義的な作風に移行してゆきます。ヴィジェ・ルブランも例外ではありません。
忘れていましたが、ダヴィットはかのブーシュを親戚にもち、彼の後押しで画家の修行を積んだそうです。

ヴィジェ・ルブランは、前半はロココ的な筆跡で恐ろしく完成度が高いうえに、やたら魅惑的な肖像画を描きました。中でも最も素敵な絵は自画像だったように思われます。彼女はかなり自分が好きな女性だったのかも。
後半は、ダヴィットの完成した新古典主義の手法で他の女流画家をこれまたダヴィット的なモニュメンタルな歴史画のような演出で描き、喝采を浴びています。
しかしその頃は、ダヴィットは完全にヘタっております。
彼の英雄好きと激しやすさ(情熱的)、地位名誉への執着は時代に翻弄される運命でもあったと言えます。

才能は同等であっても、ただひたすら自分の世界を大切にする女性の方が強かったのかも。
彼女の晩年の自画像も魅惑的にこちらに囁きかけてくるさらに磨きのかかった大変美しいものです。


おまけですが、他に美しい女流画家に、ユトリロのお母さんのシュザンヌ・バラドン(しっかり写真が残っているので間違いないでしょう)、印象派の画家であり、コローに絵を学びマネのモデルでもあったベルト・モリゾ。マラルメとの親交も深かった女性で、絵の主題は母子の微笑ましい穏やかな姿が特徴。男性中心主義の時代にはっきりと自分の視点を示しています。アールデコの画家と言えましょうか、ポーランドのタマラド・レンピッカ(近未来SF的な出で立ちで最初見たときはスーパー・ジェッターかと思いました)、日本画家でNHKの教育番組に先生として小学生を教えたりしていた松井冬子(女優ではなく芸大教授です)、ケルト神話や神秘主義に題材をもつシュルレアリズムの画家レオノーラ・キャリントン(幻想小説家としても優れた才能を発揮)、シュルレアリズムで思い出した、ドロテア・タニングご存知エルンストの奥さんです。もろシュルレアリストで、なかなか良い絵を描きます。この人たちを挙げたなら、レメディオス=バロも出しておきます。スペインのシュルレアリスト。ものすごいアクがあります。ソフィアローレンタイプですか?
彫刻家では、カミーユ・クローデルでしょう。類希な美貌と才能にあふれた女性でしたが、ロダンとの関係で発狂してしまい人生の後半を台無しにしてしまいます。イザベル・アジャーニは、カミーユの底知れぬどうにもならない狂気を、丁度トマス・エドワード・ロレンスを演じたピーター・オトールのように、見事に演じきっています。

この辺にしておきます。あくまでもおまけです。気にしないでください。


*なお、Web上に見つかるヴィジェ・ルブランの画像はみな目が潰れ全体が黄色がかっており、実物のイメージから程遠いものばかりです。それを見てがっかりしないでください。是非、美術館或いは解像度の高い画集でご覧になってください。


Camille Claudel




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