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2014年4月11日金曜日

ベルナール・ビュッフェ ~ 純粋な苦悩 ~

ベルナール・ビュッフェ 
1928~1999 フランス



晩年に輪郭が消えた絵が現れるがそれまで彼の絵を強く特徴付けるものは、
「黒い線。」鉄格子のような。冷たい。
単純化・抽象化をおしすすめても、
イメージ(怒り?絶望?)の横溢をせき止める線が残った。
フォルムを捨てない。
しかしそのフォルムの厳しさ。
表情は孤独に、生々しく。
空間には無数に引っかき傷が走る。
シャープな線というより刺々しい神経を逆なでするような。
顕な傷。

新婚時代の風景画には輪郭線が綺麗に落ち着き
激しい引っかき傷は姿を潜めている。
しかしその静けさはかえって不気味だ。
ノイズがない分、整然として美しく見えるかというと、廃園・廃墟を想わせる。
この上なく美しい廃墟だ。

ビュッフェをしっかり支え、まるごと受け容れ理解してくれる存在との出会い。
だが、彼は画家としてデビューした19歳頃からすぐに美術界から高く評価され、21歳には社会的名声を勝ち得ている。その後も発表する作品が次々に絶賛され、時代の代弁者のような扱いを受け、海外の展覧会でもすべて成功を収めている。

にも関わらず、ビュッフェの苦悩は変わらなかった。
最愛の妻がいても基本的に絵は変わらない。
ここがピカソとは違う。(ピカソは相手によってピンクの時代とかその度に変わる)

すべて、どこかトラークルを感じさせる絵だ。
この黒い輪郭線は余計なもの虚飾をすべてこそぎ取ったあとに残ったというだけでなく、ギリギリのところで生命を維持するための細胞壁だといえる。
それがあるとき内破する。



71歳での自殺(自死)は何というか壮絶なものを感じる。
パウルツェランが80歳、ジル・ドゥルーズが74歳、ニールス・ボーアが80歳で自殺しているが、何故この歳でと思うが、本人にしか分からない恐るべき事実があるに相違ない。(一般的には病気を苦になどよく言われるが)そんなわかりやすいものであるはずがない。
 
彼の18歳の時の作品「部屋」には驚愕する。
この特異な見え方。
われわれが知らない他者ー死者の視線で描かれた「部屋」である。
少なくとも人生の中でもっとも血気盛んな時期に描かれる絵ではない。
ビュッフェははじめから「他者」としてこの世に苦悩を背負い生きてきたのか?

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