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2014年4月24日木曜日

消滅した時間 (断片補遺) ~奈良原一高


アリゾナの「ゴーストシティの少女」
もともと廃園に少女はつきものだ。
腕を広げて髪をなびかせローラースケート。
光の空間と闇の空間。
ともにわれわれの空間に繋がっている。
闇の中では大概、少女の親が酒を呑んでいる。


カリフォルニアの「ゴールドラッシュ時代の家」
見事な廃屋。小さな板を一枚剥がすだけで家は跡形もなく崩れ去るだろう。
余所余所しい犬が二匹距離を置いて同じ速度で歩く。
想い出にならない想い出。
消滅した記憶の現場。
犬が引き受けている。


ユタ州の「夜のキャンプ」
動くものなど何一つない木々に囲まれた小高い丘。
ガソリンを撒き散らして走るセダンに付けられたキャンピングカーが白く輝く。
もう夜中だ。
全ては寝静まっている。
しかし、、ここでは昼も朝も寝静まっている。


サウスカロライナの「アドバタイズメント」
おおくの車が駐車するなか。
サングラスをした巨人のエンターティナーが向こうを指差す。
それはうんと彼方ではない。
しかしさほど近くでもない。
車で行かなければ着かないところだ。


ワシントンDCの「ワシントン」
ドームに尖塔が突き刺さっているような、これは墓碑銘か。
ちょうど照準を合わせたかのように
挑発的な巨大な墓は忽然と完成していた。
何も飛んでは来ない。
廃墟なのだから時間はすべて滑り落ちる。


ニューヨークの「砂にうもれた階段」
階段があるところから砂地に消えてゆく。
すべての輪郭がある境界から揺らぎ始め
風の作る砂模様へと同化してゆく。
廃園の自然学。
砂の明暗は強烈だ。



参考記事:奈良原一高 ”消滅した時間”



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